資格取得の予算を考えるとき、多くの方はまず講座の受講料を調べます。各社の価格を並べて、これなら出せる、これは厳しい、と見当をつけていく。ごく自然な進め方ですが、実際に受験まで進んでみると「思っていたより出費が続いた」と感じる場面が出てきます。
理由は単純で、資格取得にかかるお金は受講料だけではないからです。受験そのものにも手数料がかかりますし、合格したあとに登録の手続きが必要な資格では、その段階でもまとまった支出が発生します。さらに、資格を有効な状態で維持するために毎年費用がかかるものもあります。
この記事では、受講料以外にどんな費用が発生しうるのかを段階ごとに洗い出し、自分の予算表を作るための手順を編集部の視点で整理します。金額は資格によって幅が大きいため具体的な数値は挙げませんが、抜けやすい項目を先に知っておくだけで、見積もりの精度はかなり上がります。
受講料は費用の一部でしかない
費用を見誤りやすいのは、講座のページに載っている金額が「講座を受けるための代金」であって、「資格を取って使えるようにするための総額」ではないためです。この二つの間には、受験手数料、書類の実費、合格後の手続き費用といった複数の項目が挟まっています。
もう一つ、受講料そのものにも幅があります。同じ講座でもテキスト代が含まれているか、模試が別料金か、質問対応が回数制限つきかによって、実際に支払う金額は変わります。比較の段階では、まず講座側の総額をそろえてから、外側の費用を足していくという順番が分かりやすいでしょう。講座代金の水準そのものについては資格の通信講座の費用相場で整理しています。
費用を4つの段階に分けて洗い出す
抜けをなくすには、時間の流れに沿って段階を区切るのが有効です。受験前、受験時、合格後、維持の4段階に分けると、どの費用がいつ発生するのかが見えやすくなります。
| 段階 | 発生しうる費用 | 特徴 |
|---|---|---|
| 受験前 | 受講料、追加テキストや問題集、法改正対応の補講、模試や答練のオプション | 学習が長引くほど積み上がりやすい |
| 受験時 | 受験手数料、願書の取り寄せや郵送料、証明写真、住民票などの証明書、受験地までの交通費や宿泊費 | 受験回数に比例して増える |
| 合格後 | 登録に関わる税や手数料、実務講習や登録実務講習の受講料、登録申請に必要な書類の実費 | 資格によって有無も規模も大きく違う |
| 維持 | 団体への入会金や年会費、法定講習の更新費用、更新のための研修受講料 | 持ち続ける限り毎年または数年ごとに発生 |
この表を自分の候補資格に当てはめて、該当するかどうかを一つずつ確認していきます。該当しない項目があるのは当然で、たとえば登録制度のない検定であれば合格後と維持の欄はほぼ空欄になります。逆に、業務を行うために登録が必須の資格では、下の二段が予算の大きな部分を占めることもあります。
受験時の欄で見落とされやすいのが交通費と宿泊費です。試験会場が都市部に限られている資格では、住んでいる地域によって前泊が必要になります。年に一度しかない試験で遅刻は避けたいので、前日入りを選ぶ方も少なくありません。この費用は受験のたびに発生するため、複数回受験する前提なら回数分を見込んでおく必要があります。
合格後にかかるお金は資格によって差が大きい
4段階のうち、事前の情報収集で最も差がつくのが合格後と維持の部分です。試験に合格した時点で名乗れるようになる資格もあれば、合格はあくまで要件の一つで、登録を済ませて初めて業務ができるようになる資格もあります。
後者の場合、登録の前に一定の実務経験が求められたり、経験の代わりに指定の講習を受ける仕組みが用意されていたりします。この講習には受講料がかかり、日程も決まっているため、費用だけでなく時間の確保も必要になります。さらに、業務を行うために団体への加入が前提となる資格では、入会金と年会費が継続的に発生します。
登録が任意の資格でも、登録しないと名刺に書けない、実務で名乗れないといった制約がある場合があります。「合格したが登録はしていない」という状態で目的が果たせるのかどうかは、資格ごとに事情が違います。取得の目的が仕事につながることであれば、登録まで済ませて初めてスタートラインに立つと考えて予算を組むほうが、後の判断がぶれません。
加えて、資格証の有効期間が定められていて、期限までに法定講習を受けないと更新できないものもあります。更新のたびに講習料と手続き費用がかかるため、取得後に何年その資格を使い続けるつもりかによって、総額の見え方が変わってきます。業務独占のある資格ほどこの傾向が強いので、独占業務資格の記事もあわせて確認しておくと、資格の性格と費用構造のつながりが理解しやすくなります。
自分の見積もりを作る手順
実際に予算表を作るときは、次の順番で進めると迷いにくくなります。ここで大切なのは、一発合格を前提にした最良のケースだけでなく、少し余裕を持たせたケースも並べて置くことです。
- 候補の資格について、試験の実施団体が公開している受験案内から受験手数料と申込方法を確認する
- 登録制度の有無を調べ、ある場合は登録に必要な税や手数料、実務講習の要否を確認する
- 資格を維持するための年会費や更新講習があるかを調べ、何年ごとにいくら必要かを書き出す
- 講座の受講料に、追加で必要になりそうな教材やオプションの費用を足す
- 試験会場までの移動と宿泊が必要かを確認し、必要なら1回分の概算を出す
- 合格までにかかる想定年数を決め、受験時の費用にその回数を掛ける
- 維持費用は、資格を使い続けたい年数を掛けて総額に加える
想定年数の置き方に正解はありませんが、難関とされる試験ほど複数回の受験を前提にしたほうが現実に近づきます。1回で受かれば予算が余るだけなので、多めに見ておいて困ることはありません。
調べる先も決めておくと作業が早く進みます。受験手数料と申込方法は試験の実施団体の公式案内、登録に関わる費用は所管の官公庁や登録機関の案内、講習の費用は指定講習を実施している団体の募集要項に載っているのが一般的です。スクールのページにまとめられていることもありますが、金額は改定されることがあるため、最終的には実施団体側の情報で確かめるのが確実です。
書き出す形式は手元の表計算ソフトでも紙のメモでもかまいません。大切なのは、項目名と金額と支払い時期の3つを並べて残しておくことです。候補の資格が複数あるときは同じ形式で並べると、受講料だけを見ていたときとは違う順位になることがあります。学習にかかる時間まで含めた判断については費用対効果で考える資格選びで扱っています。
見積もりで外しやすいポイント
最後に、実際に計算してみたときにずれが出やすい点を挙げておきます。どれも金額そのものは大きくないこともありますが、積み重なると無視できない規模になります。
一つめは、学習が長引いたときの教材の買い足しです。法令や制度を扱う資格では、年度が変わると教材の内容が古くなります。翌年に再受験する場合、改訂版の購入や補講の受講が必要になることがあります。二つめは、直前期の模試や答練です。標準コースに含まれていないことが多く、複数回受けると相応の金額になります。
三つめは、支払いのタイミングです。総額が予算内に収まっていても、登録費用と実務講習の支払いが合格直後に集中すると、その時期の家計が苦しくなることがあります。総額だけでなく、いつ支払うのかを時系列で並べておくと安心です。四つめは、国の給付制度を前提にした見積もりです。支給は修了後になるため、申し込み時点では全額を用意する必要があります。この点は教育訓練給付金の仕組みと申請の流れで詳しく触れています。
まとめ
- 資格取得の費用は受講料だけではなく、受験手数料や証明書の実費、交通費なども含めて考える必要があります
- 受験前、受験時、合格後、維持の4段階に分けて洗い出すと、抜けが見つけやすくなります
- 登録免許税や実務講習、年会費や法定講習といった合格後の費用は資格によって差が大きく、事前確認が欠かせません
- 合格までの想定年数を掛けて総額を出し、支払いの時期も時系列で並べておくと資金計画が立てやすくなります
講座選びで迷ったら
資格の通信講座は、同じ資格でも運営会社によって受講料・学習スタイル・サポート内容が大きく異なります。資格講座.jpでは、主要な通信講座を条件で絞り込んで比較できる一覧を用意しています。気になる資格が決まっている方は、まず講座の顔ぶれを確認してみてください。
