資格試験の勉強で「過去問が大事」と言われることは、ほとんどの人が知っています。それでも実際に手をつけようとすると、いつから始めればいいのか、何周やれば足りるのか、解けなかった問題をどう扱えばいいのかで迷うものです。テキストをまだ読み終えていない段階で問題集を開くことに、抵抗を感じる人も少なくありません。
過去問は、単に力を測るための道具ではありません。その試験が何をどの深さで問うのかを教えてくれる資料であり、学習の方向を決める基準にもなります。だからこそ、着手する時期と使い方によって効き方が大きく変わります。
この記事では、過去問を始める時期の考え方、周回の回数と間隔の取り方、解いたあとの処理の仕方を編集部で整理しました。やみくもに冊数を増やさずに、同じ教材から取り出せるものを増やすための内容です。
過去問はいつから始めるべきか
結論から言えば、テキストを全部読み終えるのを待つ必要はありません。むしろ、学習を始めたごく初期の段階で一度、過去問に目を通しておくことをおすすめします。解けなくてかまいません。目的は、問われ方の形を知ることです。
選択肢の長さ、どこまで細かい知識を要求されるのか、計算が必要なのか条文の理解を問うのか。これらを先に見ておくと、テキストを読むときの目線が変わります。試験に出ない細部に時間をかけたり、逆に重要な箇所を流したりする無駄が減ります。
本格的に演習として取り組むのは、テキストの1単元が終わった時点からで十分です。全体を読み終えてからではなく、単元ごとに区切って解いていくほうが、記憶が新しいうちに定着を確かめられます。学習期間全体の組み方は学習計画の立て方もあわせてご覧ください。
周回の目安と、周ごとの目的の違い
「何周やればいいか」への答えは、回数そのものより「周ごとに何をするか」で考えるほうが実際的です。同じ解き方で5周するより、目的を変えて3周するほうが手応えが出ることがあります。一般的な進め方の目安を整理します。
| 周 | 目的 | やること |
|---|---|---|
| 1周目 | 現状の把握 | 時間をかけてよいので全問に触れ、解けた問題と解けない問題を分ける |
| 2周目 | 理解の穴を埋める | 解けなかった問題を中心に、なぜ間違えたかを解説とテキストで確認する |
| 3周目 | 定着の確認 | 間隔をあけて再度解き、まだ落とす問題を絞り込む |
| 4周目以降 | 取りこぼしの回収 | 繰り返し落とす問題だけを対象に、本番の時間感覚で解く |
周を重ねるほど対象の問題数は減っていくのが自然な形です。毎回すべての問題を最初から解き直していると、すでに定着した問題に時間を取られ、苦手な範囲に手が回らなくなります。3周目以降は「落とした問題だけ」に絞ってかまいません。
周と周の間隔も大切です。翌日にもう一度解けば当然覚えていますが、それは思い出す練習にはなりません。数日から2週間ほど間をあけてから解き直すほうが、実際の記憶の定着を確かめられます。間隔の考え方は復習のタイミングで扱っています。
解いたあとの処理で差がつく
過去問の効果は、解いている時間より解いたあとの数分で決まります。答え合わせをして正解数を数えるだけで終えてしまうと、次に同じ問題に出会っても結果は変わりません。次の手順を習慣にしておくと、一問あたりから取り出せるものが増えます。
- 正解した問題も、選んだ理由を説明できるか確かめる。勘で当たった問題は不正解として扱う
- 誤りの選択肢について、どこがどう誤りなのかを一言で言えるようにする
- 間違えた原因を「知らなかった」「覚え違い」「読み違い」「時間切れ」に分類する
- 知らなかった論点だけ、テキストの該当箇所に戻って前後ごと読み直す
- 問題番号の横に、解いた日と正誤の記号を残しておく
特に効くのが、間違えた原因の分類です。知らなかったのなら知識を足す必要がありますが、読み違いなら知識ではなく問題文の読み方の問題です。原因が違えば打つ手も違うのに、まとめて復習してしまうと的外れな対策になります。
また、誤りの選択肢を説明できるようにしておくと、一問から複数の論点を回収できます。四択なら、正解を選ぶだけでは一つの知識ですが、残り三つの誤りを説明できれば四つ分の確認になります。
年度別と分野別、どちらを使うか
過去問集には、年度ごとにそのまま並んだものと、分野別に組み替えられたものがあります。それぞれ役割が違うため、時期によって使い分けるのが現実的です。
分野別は学習の途中で使う
テキストの単元と対応づけて解けるため、学習の進行に合わせて使いやすい形です。同じ論点の問題がまとまっているので、問われ方の幅も見えます。基礎期から演習期にかけての主役はこちらになります。
年度別は時間配分の練習に使う
本番と同じ順番、同じ問題数で並んでいるため、時間内に解ききる練習になります。分野別では気づけない、科目をまたぐ切り替えの負担や、後半の集中力の落ち方も体感できます。直前期に、本番と同じ時刻に合わせて解いてみると効果的です。
どちらを使うにせよ、手を広げすぎないことが大切です。複数の問題集を並行して一周ずつやるより、一冊を繰り返すほうが定着しやすい傾向があります。演習と講義の組み合わせ方についてはインプットとアウトプットの配分も参考になります。
古い年度はどこまでさかのぼるか
過去問は多いほどよいと考えがちですが、古い年度には注意が必要です。法改正や制度変更があった分野では、当時の正解が現在の基準では誤りになっていることがあります。市販の過去問集や講座の教材では改正に対応した注記が入っていることが多いので、その表示があるかを確認してください。
さかのぼる範囲は、直近数年分を確実に仕上げることを優先し、余力があれば範囲を広げるという順序が無難です。10年分を一周するより、直近5年分を三周するほうが、本番で解ける問題は増えやすいと考えられます。
なお、出題形式そのものが変更された試験では、変更前の年度は参考程度にとどめる判断も必要です。試験の実施団体が公表している出題方針を確認し、形式が変わっていないかを見ておくとよいでしょう。
通信講座を利用している場合は、教材に収録された過去問がどの範囲をカバーしているか、改正への対応がいつ反映されるかを確認しておくと安心です。市販の問題集を買い足すべきかどうかも、その時点で判断できます。
過去問で伸び悩んだときに見直すこと
周回を重ねているのに正答率が上がらない、という状態に入ることがあります。多くの場合、原因は演習量ではなく取り組み方の側にあります。
よくあるのは、答えを覚えてしまっているだけの状態です。問題文の最初の数行を見た時点で「これは3番」と反射的に分かるようになると、解けている感覚はあっても知識は増えていません。この段階に入ったら、選択肢の順番が入れ替わっても答えられるか、なぜ他が誤りかを説明できるかを基準に切り替えます。
もうひとつは、基礎の理解が足りないまま演習を回している場合です。同じ分野で繰り返し落としているなら、問題を解く回数を増やすより、テキストや講義でその分野をまとめて読み直すほうが早く抜けられます。演習で見つけた穴を基礎に戻って埋める往復が、過去問を使ううえでの中心になります。
まとめ
- 過去問は早い段階で一度目を通し、本格的な演習は単元が終わるごとに始める
- 周回は回数より目的が大切で、周を重ねるほど対象を絞っていきます
- 間違えた原因を「知らなかった・覚え違い・読み違い・時間切れ」に分けて手を変える
- 分野別は学習途中、年度別は直前期。冊数を増やすより一冊を繰り返すほうが定着しやすい傾向があります
過去問の解説の丁寧さや、演習量の確保のしやすさは講座によって異なります。当サイトでは資格ごとに主要な通信講座を比較しています。
