通信講座に申し込むと、まず目に入るのは膨大な量の講義動画です。順番に見ていけば力がつくはずだと考え、毎日こつこつ視聴を進める。ところが、いざ問題を解いてみると手が止まる。「聞いたときは分かったつもりだったのに」という感覚は、多くの受験者が一度は経験するものです。
この現象は、意志や理解力の問題ではありません。講義を聞いて理解することと、問われたときに自分で答えを引き出すことは、頭の中で別の作業だからです。前者だけを繰り返しても、後者は思ったほど伸びていきません。
この記事では、インプットとアウトプットをどう配分すればよいのか、時期によってどう変えていくのか、そして講義を聞いたあとに何をすれば「聞いただけ」で終わらないのかを編集部で整理しました。
「分かる」と「答えられる」は別の能力
講義を聞いているとき、私たちは説明の流れに沿って理解しています。講師が順序立てて話し、要点を示してくれるため、内容がつながって見えます。この状態はたしかに理解ですが、手がかりを与えられたうえでの理解です。
一方、試験で求められるのは、手がかりのない状態から必要な知識を取り出すことです。問題文というわずかな入口だけを頼りに、記憶の中から該当する論点を探し、当てはめて答えを出す。この「取り出す」動作は、聞いているだけでは鍛えられません。
つまり、アウトプットは理解を確認するための作業ではなく、それ自体が取り出す力を育てる訓練です。問題を解く時間を「確認のための時間」と位置づけていると、配分は自然にインプット寄りに傾いていきます。まずこの認識を切り替えるところが出発点になります。
時期ごとの配分の目安
配分に唯一の正解はありませんが、学習の段階によって重心を移していくのが基本的な考え方です。ひとつの目安として、次のような移り方が挙げられます。
| 時期 | 配分の目安 | 中心にすること |
|---|---|---|
| 学習の入り口 | インプット寄り | 講義とテキストで全体像をつかむ。用語と科目の関係を把握する |
| 基礎が一巡したころ | 半々に近づける | 単元ごとに講義と演習を交互に回し、理解の穴を見つける |
| 演習期 | アウトプット寄り | 問題演習を中心に置き、落とした論点だけ講義とテキストに戻る |
| 直前期 | 大きくアウトプット寄り | 時間を計った演習と、繰り返し落とす箇所の総復習にあてる |
迷ったときは、想定より早くアウトプットを増やすほうが安全です。「テキストを完璧にしてから問題へ」と考えると、完璧という状態には到達しないため、いつまでも演習が始まりません。理解が半分でも、問題に当たってから戻るほうが効率がよい場面は多いものです。
時期の区切り方そのものについては、学習計画の立て方で扱っています。試験日から逆算して段階を決めておくと、配分をいつ切り替えるかも判断しやすくなります。
講義を聞いたあとの5分で変わる
まとまった演習時間が取れない日でも、講義の直後に短いアウトプットを挟むだけで定着は変わります。次のどれかひとつでかまいません。
- テキストを閉じた状態で、今の講義の内容を声に出して要約してみる
- 紙に何も見ずに、出てきた用語とその意味を書き出す
- 該当単元の問題を数問だけ解き、解けるかどうかを確かめる
- 「今日の講義を一文で言うと何か」を自分に問い、答えを書き留める
- 分からなかった箇所を、質問できる形の文章にしてみる
いずれも共通しているのは、教材を見ずに自分の中から取り出す点です。教材を見ながらまとめ直す作業は、作業としては進んだ気がしますが、取り出す訓練にはなっていません。
特に、何も見ずに要約すると、自分がどこを理解していないかがはっきり出ます。言葉に詰まった箇所が、そのまま復習すべき箇所です。この気づきは、講義を聞き流しているだけでは得られません。
インプットに偏りやすい理由と、その対処
頭では演習が大切だと分かっていても、実際の学習時間は講義視聴に寄りがちです。これには理由があります。
進んだ感覚が得られるから
講義は再生すれば必ず進みます。視聴済みの本数が増えていく手応えがあり、心理的な負担も軽い。対して演習は、解けない問題に直面するため気分が重く、進んだ実感も得にくいものです。この差が、無意識のうちに配分を偏らせます。
間違えるのを避けたくなるから
「もう少し理解してから解こう」という判断は、実のところ間違えたくないという気持ちから来ていることがあります。しかし演習の目的は正解することではなく、どこが抜けているかを見つけることです。早い段階で間違えるほど、修正に使える時間は多く残ります。
対処は時間ではなく順番で決める
配分を守るには、時間で管理するより順番を固定するほうが機能します。たとえば「学習を始めたらまず前回の演習の解き直しから入る」と決めておけば、演習が後回しになりません。疲れてくる後半に演習を置くと、そのまま省略されやすくなります。
アウトプットの質を上げる仕組み
演習の量を増やしただけでは、伸びが頭打ちになることがあります。解いて丸をつけて終わりにせず、間違えた原因まで戻る往復が組み込まれているかどうかが分かれ目です。具体的な進め方は過去問の使い方で詳しく扱っています。
もうひとつ効くのが、解き直しの間隔です。間違えた問題をその場で解き直すと当然できますが、それは覚えている状態を確認しただけです。数日から2週間ほど置いてから再挑戦すると、本当に取り出せるかが分かります。間隔の考え方は復習のタイミングを参考にしてください。
講座選びの観点では、講義の分量に対して演習教材がどれくらい用意されているかを見ておくと、配分を保ちやすくなります。講義が長大で問題演習が薄い構成だと、どうしてもインプットに偏ります。講義そのものの評価軸は映像講義の見極め方にまとめています。
あわせて確認しておきたいのが、講義の再生速度を変えられるかどうかです。倍速で視聴できれば同じ時間でインプットを短縮でき、その分を演習に回せます。ただし速度を上げるほど内容が頭に残りにくくなる面もあるため、初見の単元は等速に近い速度で、復習として見返すときは速めに、といった使い分けが現実的です。
記述式や実技がある試験での考え方
選択式が中心の試験と、記述式や論文、実技が課される試験とでは、アウトプットの意味合いが少し変わります。選択式であれば正誤の判断がその場でつきますが、記述式は書いてみなければ自分の答案の水準が分かりません。
この場合、頭の中で答案の骨組みを組み立てるところまでで満足せず、実際に手を動かして書ききる回数を確保する必要があります。書く作業には時間がかかるため、演習の時間を先に確保しておかないと、いつまでも本番形式の練習に入れないまま直前期を迎えることになります。
また、記述式では自分では気づけない癖が答案に出ることがあります。第三者に見てもらえる添削の仕組みがあるかどうかは、こうした試験を受ける場合の講座選びで確認しておきたい点のひとつです。添削の回数や返却までの日数は講座によって異なります。
まとめ
- 講義で「分かる」ことと、試験で「答えられる」ことは別の作業です
- 入り口はインプット寄り、進むにつれてアウトプット寄りへ重心を移します
- 講義の直後に、教材を見ずに要約や数問の演習を挟むだけでも定着が変わります
- 配分は時間ではなく順番で管理し、演習を学習の前半に置くと省略されにくくなります
講義と演習のバランスは講座の構成によっても変わるため、教材の中身を横並びで見比べて選ぶのが近道です。当サイトでは資格ごとに主要な通信講座を比較しています。
